サンスクリット語学習記録 第2回
前回はサンスクリット語にどんな音があるかだけで終わってしまいましたが
次に覚えるのは音がどんなふうに変化するかの規則です。
サンスクリット語は単語を並べればそのまま文がつくれるわけではなく、
①単語の最後の位置(絶対語末という)に来られるのは限られた音だけなので、
元の形が別の音の場合は変化しないといけなかったり
②単語と単語、あるいは単語の部品と部品が接続するときに
発音しやすいように接続部周辺の音が変化することがあったり
という現象が起こるので、それがどんな規則による変化なのかを
覚える必要があります。
これを知らないと、テキストに出てくる形(規則に従って変化した後の形)を見ても
単語のもとの形がわからないので辞書すら引けません。
単語と単語がくっつくときに接続部周辺の音が変化する現象は
日本語にも「連濁」というやつがあります。
おとぎ+はなし→おとぎばなし
株式(かぶしき)+会社(かいしゃ)→株式会社(かぶしきがいしゃ)
みたいに、複合語を作るときに後ろの語の最初の子音が清音から濁音になる現象です。
音声学的に言えば「無声の子音が有声化している」ということになります。
周りの有声音(母音)の影響で子音が変化する現象、すなわち「同化」の一種と考えられます。
ちなみに、複合語なら何でも連濁するわけではなく
連濁が阻止される条件はたくさん指摘されています。
◇後部要素にもともと濁音が含まれる場合
・髪+飾り→髪飾り(かみかざり)
◇意味的に修飾・被修飾でなく並列の場合
・山+川→山川(やまかわ)
◇連濁するのは和語が主で、漢語や外来語は稀(ただし「株式会社」みたいな例もある)
・ライス+カレー→ライスカレー
・赤+カレイ(魚)→アカガレイ
などなど…
規則とはいうものの、厳格に適用されるわけではなく
例外が見つかるので今でも色々と考察がされています。たぶん。
またすっかり日本語の話に逸れてしまいましたが、
サンスクリット語の音の変化(連声とよぶ)も同じように周辺の音に
影響されて起こると考えることができます。
例えば、日本語の連濁と同じように
/k/ /t/ /p/ が有声音の前で /g/ /d/ /b/ に変化=有声化します。
また日本語の「ん」みたいに、鼻音の発音位置が後ろの音によって
喉の近くになったり歯の辺りになったり唇になったりもします。
というようなのが前と後ろの音の組合せパターンによって様々あります。
表になるとこんな感じ。
覚えなくてはいけないパターンの数はめちゃめちゃ多いのですが、だからこそ
ただ丸暗記するよりも日本語と似た現象だと理解すれば脳の負担が減る!と思って
連濁やらなんやらのことを思い出しながらノートをとってました。
(とはいえこんなのを単語の実例なしに覚えるのは非常に辛いので、
一通りぼんやり理解しておいて、あとで実例が出てきたときに戻って
覚えていくようにするつもりではありますが…)
語形変化の順番としては
1) 単語のもとの形から、
2) 絶対語末規則で末尾の音が変化し、
3) さらに上の連声規則が適用されて変化する
となるので
3) を見て 2) へ戻し、さらに 1) へ戻してもとの形を特定して意味を理解する、または辞書で探すというプロセスでテキストを読んでいくことになりそうです(まだやってないからわかんない)。
言語学は言語の習得が至上目的ではないのですが、
種々の言語に起きる現象を同じ理屈で一般的に理解することができるので
新しい言語で新しい現象が出てきても「○○語のアレと一緒かな」となって
あまり慌てなくなります。
多言語をやる方は言語学の基礎をかじってみると役立つはずです。
音声学と音韻論だけでも。
学習記録といいつつ日本語に気が散ってる上に言語学のCMをやってて
ぜんぜん復習になってないので、次回はもっとサンスクリット語に集中します…