サンスクリット語学習記録 第14回

今回は「分詞」です。

動詞の形を変えてつくられ、形容詞のような役割を果たすものです。英語にも「現在分詞」や「過去分詞」がありますね。

但し、サンスクリットでは述語として用いられることが多く、登場頻度も高いため重要です。

 

 

現在分詞「~している」・未来分詞「~しようとする」

1. 接尾辞 at 

①現在語幹+at/ant+語尾→現在分詞 [P]

②未来語幹+at/ant+語尾→未来分詞 [P]

(例)弱語幹 / 強語幹 / 女性形 の順に。数字は動詞の類

   1 √ruh(成長する)→ rohat / rohant / rohantī

   4 √tuṣ(満足する)→ tuṣyat / tuṣyant / tuṣyant

   ※第4類なので語幹をつくるときyaがつく

   6 √tud(打つ)→ tudat / tudant / tudantī

   10 √cur(盗む)→ corayat / corayant / corayantī

   ※第10類なので語幹をつくるとき母音がGuṇa化してyaがつく

 

2. 接尾辞 māna (f. mānā)

①現在語幹(第1種)+māna/mānā+語尾→現在分詞 [Ā]

(例)1√ruh(成長する)→ rohamāṇa

   4 √tuṣ(満足する)→ tuṣyamaṇa

   6 √tud(打つ)→ tudamāna

   10 √cur(盗む)→ corayamāṇa

  ※māna → māṇa となっているのは内連声のせい

 

3. 接尾辞 āna (f. ānā)

①現在語幹(第2種)+āna (f. ānā)+語尾→現在分詞 [Ā]

(例)2 √dviṣ(憎む) → dviṣāṇa

   3 √hu(供える)→ juhvāna ※第3類なので重字している

   5 √su(搾る)→ sunvāna

   7 √bhid(阻止する)→ bhindāna

   8 √kṛ(為す)→ kurvāṇa

   9 √aś(食べる)→ aśnāna

 

※完了分詞をつくることも(次項も参照)

②完了(弱語幹)+āna (f. ānā)+語尾→完了分詞[Ā]

(例)1 √nī(導く)→ ninyāna

   1 √pac(調理する)→ pecāna

   3 √dā(与える)→ dadāna

   8 √kṛ(為す)→ cakrāṇa

 

完了分詞「~した」

1. 接尾辞 vas

①完了(弱語幹)+vas (usī)+語尾→完了分詞 [P]

 ※重字しても1音節の語幹は vas の前に i を挿入する

(例)3 √tud(打つ)→ tududvas

   7 √bhid(阻止する)→ bibhidvas

   2 √i(行く)→ īyiyas

   1 √iṣ(求める)→ īṣivas

 

過去受動分詞「~された(他動詞)」「~した(自動詞)」

※修飾語にも述部としても使われ、最もよく出てくる。受動態同様、動作主は具格で表される。

1. 接尾辞 ta:母音で終わる語根・子音で終わる単音節の多くの語根につく

①√-母音/子音(単音節)+ta → 過去受動分詞

(例)1 √ji(勝つ)→ jita

   1 √nī(導く)→ nīta

   3 √hu(供える)→ huta

   8 √kṛ(為す)→ kṛta

   1 √budh(悟る)→ buddha

   10 √cur(盗む)→ corita ※10類の接尾辞 -ayaを-iに変えてつける

   

※頻出するだけあって、不規則なものが多数。

 (1) Saṃprasāranaによる(ya→i, va→u, ra→ṛ へ変化)

(例)√yaj(崇める)→ iṣṭa

   √vac(言う)→ ukta

   √vas(留まる)→ uṣita

   √svap(眠る)→ supta など

 

 (2) 語根末前の鼻音が消滅

(例)√daṃś(噛む)→ daṣṭa

   √bandh(縛る)→ baddha

   √sañj(固執する)→ sakta など

 

 (3) 語根末の鼻音が消滅

(例)√kṣan(傷つく)→ kṣata

   √gam(行く)→ gata

   √man(考える)→ mata

   √han(殺す)→ hata など

 

 (4) 語根末の鼻音が消滅し、その前の a が ā になる

(例)√khan(掘る)→ khāta

   √jan(生まれる)→ jāta など

 

 (5) 語根末の長母音(二重母音も)が i/ī になる

(例)√gai(歌う)→ gīta

   √pā(飲む)→ pīta

   √sthā(留まる)→ sthita など

 

 (6) 語根末の h の連声による

(例)√guh(覆う)→ gūḍha

   √duh(搾る)→ dugdha

   √ruh(成長する)→ rūḍha

   √lih(舐める)→ līḍha

   √nah(結ぶ)→ naddha など

 

 (7) 語根末の m が接尾辞 ta に同化され n となり、その前の a が ā になる

(例)√kam(愛する)→ kānta

   √dam(抑える)→ dānta

   √bhram(徘徊する)→ bhrānta など

 

不規則といっても見た目が大きく変わるのは (1) くらいで、あとは何となく元の形がイメージできることが多いです。

(1) は先頭の文字が変わるので、辞書や語彙集で似た形を調べても偶然見つけることがないんですよね…。

 

2. 接尾辞 na

① 長母音(とくに ṝ)で終わる語根に直接つく(ā→ī, ṝ→īr または唇音の後ろでは ūr となる)

(例)√hā(捨てる)→ hīna

   √kṣi(壊れる)→ kṣīna

   √kṝ(散らす)→ kīrna

   √pṝ(満たす)→ pūrṇa

 

② g や j で終わる語根につく(語幹末はgになる)

(例)√lag(着く)→ lagna

   √bhañj(破る)→ bhagna

   √bhuj(曲がる)→ bhugna

 

③ d で終わる語根に直接つく(d→n)

(例)√chid(断つ)→ chinna

   √nud(推進する)→ nunna

   √pad(落ちる)→ panna

   √bhid(破る)→ bhinna

 

過去能動分詞「~した」

1. 接尾辞 vat:過去受動分詞の後ろにつく

① (過去受動分詞)+ vat → 過去能動分詞

(例)√kṛ(為す)→ 過去受動分詞 kṛta → kṛtavat

   √dṛṣ(見る)→ 過去受動分詞 dṛṣṭa → dṛṣṭavat

 

未来受動分詞「~なされるだろう」「~されるべき」

※動形容詞ともよばれる。下記3つの接尾辞を語根もしくは第2次活用の動詞語幹につける

1. 接尾辞 tavya:Guṇa化した語根 or Guṇa化して語幹母音の i で終わる語幹につく

①√Guṇa + (i)tavya → 未来受動分詞

(例)√ji(勝つ)→ jetavya

   √bhuj(食べる)→ bhoktavya

   √kṛ(為す)→ kartavya

   √cur(盗む)→ corayitavya

   √grah(つかむ)→ grahītavya

 

2. 接尾辞 anīya:Guṇa化した語根につく。tavya より出現頻度は少ない。

②√Guṇa + anīya → 未来受動分詞

(例)√ci(積む)→ cayanīya

   √ṣru(聞く)→ ṣravanīya

 

3. 接尾辞 ya:Guṇa化もしくは Vṛddhi化した語根につく。語根末の ā は e に変える

③√Guṇa / Vṛddhi + ya → 未来受動分詞

(例)√dā(与える)→ deya

   √pā(飲む)→ peya

   √gai(歌う)→ geya

 

※語根末の i/ī は e になる(可能の意味を含むと ay)

(例)√ji(勝つ)→ jeya(勝たれるべき)/ jayya(勝たれうる)

   √krī(買う)→ kreya(買われるべき)/ krayya(買われうる)

 

※語根末の u/ū は av になる(必然の意味を含むとāv)

(例)√bhū(なる)→ bhavya(なるべき)/ bhāvya(ならなければならない)

   √nu(褒める)→ navya(褒められるべき)/ nāvya(褒められなければならない)

 

他に、ṛ → ār になったり母音が Guṇa化したり t が入って tya となる例も。

 

まとめ

以上、それぞれ形容詞(名詞にも)として性・数・格によって曲用(語形変化)します。

細かい条件で微妙に変化することはありますが、読解においてはどんな標識が出てきたらどんな分詞になる可能性があるか、とわかれば調べようがあるのでまずは基本の形を覚え(ようとして)ます。

 

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短文で読解練習をしていると、未完了過去やアオリストや完了なんかよりも過去分詞が述語として頻繁に出てくるので、しっかり理解したいところ…