サンスクリット語学習記録 第13回
ちまちま勉強はしていたのですが、間が空いてしまいました…
動詞の派生的な活用を一気にやります。
①使役活用法「~させる」
②意欲活用法「~しようとする」
③強意活用法「激しく~する」
②と③は登場頻度が低いらしいので、簡単に…
〇現在組織の使役活用法
・現在組織の使役形は、語根の母音を Guṇa/Vṛddhi 化させて aya を付ける
使役形 (Causative) = √Guṇa/Vṛddhi + aya + 語尾(第1種活用)
※第10種動詞の語幹の作り方と同じ
(例)√nī(導く)→ 使役:nāyaya-(導かせる)
√bhū(なる)→ 使役:bhāvaya-(ならせる)
√kṛ(する)→ 使役:kāraya-(させる)
・語根の中間にある a は長母音化しないこともある。
(例)√gam(行く)→ 使役:gamaya-(行かせる)
√jan(生まれる)→ 使役:janaya-(生ませる)
√tvar(急ぐ)→ 使役:tvaraya-(急がせる)
・ā や 二重母音 (e, ai, o) で終わる語根は aya の前に p が入ることが多い
(例)√dā(与える)→ 使役:dāpaya-(与えさせる)
√sthā(留まる)→ 使役:sthāpaya-(留まらせる)
√dhe(吸う)→ 使役:dhāpaya-(吸わせる)
現在組織のみですが変化表の例です。
〇現在組織以外の使役活用
・アオリスト:重字アオリスト(a + 重字語幹 - aya + 第2語尾)を使う
(例)√pṝ(救う)→ 使役・一人称単数:apīparam
√nī(導く)→ 使役・一人称単数:anīnayam
・完了:複合完了を用いる
※複合完了
① aya を伴う語幹 + ām + √kṛ(なす)の 完了形 [P]/[Ā]
② aya を伴う語幹 + ām + √as(ある)の 完了形 [P]
③ aya を伴う語幹 + ām + √bhū(なる)の 完了形 [P]
(例)√tuṣ(満足する)→ 使役・完了・一人称単数:toṣayām āsa
・未来:語幹に i を加え (aya → ayi) てから 標識の sya を付ける
(例)√cur(盗む)→ 使役:coraya- → 使役未来:corayiṣya-
・受動:aya を除いてから受動を表す ya を付ける
(例)√budh(悟る)→ 使役:bodhaya- → bodhya-
※使役の対象(実際の動作主)は具格で表されることが多い
yaを付ける受動態と似ていますが、使役は語根の母音がGuṇa/Vṛddhi化するのでそれで見分けられそうです。
〇意欲活用法
・重字させた語根に sa または isa をつけて語幹をつくる
意欲活用 (Desiderative) = 重字 + 語根 + (i)sa + 語尾(第1類の活用)
・重字音節の母音は基本的に i だが、語根の母音が u/ū なら u を用いる
(例)√pac(調理する)→ pipakṣa-(調理したい)
√kṣip(投げる)→ cikṣipsa-(投げたい)
√tud(打つ)→ tututsa-(打ちたい)
√vid(知る)→ vivitsa- / vividiṣa-(知りたい)
√duh(搾る)→ dudhukṣa-(搾りたい)
・語根末の i, u は長音化し、r/ṛ は īr となる(唇音の後ろでは ur)
(例)√ji(勝つ)→ jigīṣa-(勝ちたい)
√śru(聞く)→ śuśrūṣa-(聞きたい)
√kṛ(する)→ cikīrṣa-(したい)
・不規則な例:√āp(到達する)→ īpsa-, √gam(行く)→jigāṃsa- など
〇強意活用法
・音を強めた特別な重字音節を語根に付ける(強める方法はいくつかある)
①重字(特別)+ 語根 + ya + 語尾(第4類動詞の活用)… [Ā] こちらのほうが多い
②重字(特別)+ 語根 + 語尾(第3類動詞の活用)… [P]
・[Ā] の場合(ya をつける①のパターン)の例
重字母音 i/u → Guṇa 化…√dīp(輝く)→ dedīpya-
重字母音 a → 長音化…√jval(燃える)→ jājvalya-
鼻音で終わる → 重字音節に鼻音…√kram(歩む)→ caṃkramya-, √gam(行く)→jaṅgamya-
ṛ のある語根の一部 → 重字音節にr(ī) を入れる…√nṛt(踊る)→ narīnṛtya-
・[P] も同様だが一部違う語根もあるらしい(かなり珍しいらしいので割愛)。
やたら重字音節が強まってたらこれを疑う、くらいでよさそう。
ちょいちょいここのリーディングにも挑戦してますが、今のところ使役がちょっと出てきただけで意欲・強意はまだ見かけません…