サンスクリット語学習記録 第7回
前回出てきた通り、動詞は2種10類に分類されます。
第1種活用:1、4、6、10類の共通点は以下の通りでした。
・語幹は a で終わる
・命令法 [P] 二人称単数で語尾なしで語幹をそのまま使う(上表参照)
・第2語尾 [Ā] 二人称両数の ethām など、e で始まる語尾の前では語幹の a は省略される
・願望法では語幹と語尾の間に ī が入る(語幹末の a と連声して e になる)
各種ごとに語幹の作り方が異なります。
数字の順番は無視して、とっつきやすい順で第6類から行きます。
第6類
・語根に a をつけて語幹をつくる。
(例) √tud(打つ)→tuda
第1類
・語根に a をつけて語幹をつくる。
・母音で終わる語根の場合、語根にあった母音がGuṇa(重韻)化
(例)√nī(導く)→naya、√bhū(なる)→bhava
・短母音+単子音の場合、語根にあった母音がGuṇa化
(例)√ruh(成長する)→roha、√vṛdh(育つ)→vardha
・短母音に複数の子音がついたり、長母音や二重母音の時は母音が変化しない
(例)√krīd(戯れる)→krīda、√nind(嘲る)→ninda、√mūrch(失神する)→mūrcha
第4類
・語根に ya をつけて語幹をつくる。
(例)√tuṣ(満足する)→tuṣya
第10類
・語根に aya をつけて語幹をつくる。
・語根末が母音の場合や a が単子音に挟まれて語根末にくる場合、Vṛddhi化
(例)√taḍ(打つ)→tāḍaya
・i, u, ṛ に単子音がついて語根末にくるとき、それらはGuṇa化
(例)√cur(盗む)→coraya
・それ以外のとき、語根の母音に変化なし
(例)√cint(考える)→cintaya
活用表の例。
今まで「出てきたらそのうち覚えるっしょ」ということにして適当に流してきた母音の階梯と連声がとても重要になってきました。
たとえば第1類の例で出てきた√nī がどうしてnayaという一見かなり違う見た目の形になるかというと、
・√nī は母音で終わる語根なので ī が Guṇa化する。
※通常なら i, ī は Guṇa化すると e になるが、次に母音が来るときは ay という形になる。
・次に来る音は第1類の語幹をつくる a なので、ī は ay に変化して a と結びつき、語幹は nayaになる。
というプロセスを踏んでいるわけで、これを理解できないとnaya(実際には語尾がつくのでさらに違う形になる)を見ても辞書で√nī を探すことはできません。
いちいちあてはまりそうな法則を探しては試行錯誤するのは面倒な作業ですが、適用されている法則がクリアに理解できると数学の問題が解けたときに近い感覚があります。
せっかくサンスクリット語をやっているので、比較言語学の本を読んでみました。
サンスクリット語の例も豊富に出てきて、こうして多少なりともかじっているおかげで理解できる例もありました。
(全体的に「入門」のレベルではない気がしましたが…)
もともと 比較言語学的な点からサンスクリット語に興味を持ったので、そういう文脈で少しでも学習の効果を感じられるととやる気出ますねー。
反面、もっと豊富に例が出てくるギリシャ語もちょっとやりたくなってしまいました。
音韻法則だけでもなんとなく理解できるように、ギリシャ文字だけやって再読するのもありかなと思います。
と書いたところで、この本も買ってあったのを思い出しました。
サンスクリット語の変化表写し反復作業の合間に眺めようかな。