サンスクリット語学習記録 第6回

前回までで名称詞(名詞+形容詞)にケリを無理やりつけたので、動詞の活用に入ります。

 

名詞と形容詞は語幹に格語尾を付けて活用しましたが、動詞は語幹に人称語尾をつけて活用します。

辞書に載っている形である語根(√で表す)を変化させて語幹を作るので

「語幹(√+接尾辞)+人称語尾」となります。

 

名詞の格語尾には 性・数・格 がありましたが、動詞の人称語尾には数・人称・言(態)があります。

英語で言う「3単現の s」みたいな変化パターンがものすごくたくさんある感じです。

 

1. 数

 名詞と同じく単数・両数・複数の3つ。

 主語と動詞の数は一致する(ので文中でそれぞれを見つけやすくなるはず?)。

 

2. 人称

 一人称(話し手)、二人称(聞き手)、三人称(それ以外)があります。

 英語ではそれぞれ1st person, 2nd person, 3rd person と序数を使って表します。

 

3. 態(または言)

 Voiceともいいます。

 「能動態」「受動態」という言い方は英語でも出てくるやつです。

 能動態にあたるものがサンスクリット語では2つに分かれているため計3種になります。

・為他言 (Parasmaipada) 主語が動作主、動作対象は他者 能動態ともいい、[P] と表す

・為自言 (Ātmanepada) 主語が動作主、動作対象は自分 反射態ともいい、[Ā] と表す

・受動言 (passive) 主語が動作の受け手 受動態ともいう。[Ā] の語尾を用いる

 教材や先生によって用語が異なるようですが(やめてくれ)、 [P] と [Ā] で分かれば大丈夫そうです。

 

動詞はその動作がいつ行われたのか(時制 tense)、事実なのか仮定なのか命令なのか(法 mood)といった内容も表します。

それによって語幹をつくる方法がどうも複数あるようで、それぞれ4つに分けられ組織 (system)とよばれます。

1) 現在組織(現在語幹に基づく)

 ・直説法現在 (Present = Pres.)

 ・直説法過去 (Imperfect = Impf.)

 ・願望法 (Optative = Opt.)

 ・命令法 (Imperative = Impv.)

2) アオリスト組織(アオリスト語幹に基づく)

 ・直説法アオリスト (Indicative Aorist = Aor.)

 ・祈願法 (Precative = Prec.)

3) 完了組織(完了語幹に基づく)

 ・直説法完了 (Indicative Perfect = Pf.)

4) 未来組織(未来語幹に基づく)

 ・直説法未来 (Indicative Future = Fut.)

 ・条件法 (Conditional = Cond.)

 

願望法と祈願法って何が違うんだ…

 

この他にも、受動言・使役活用法・強意活用法・分詞などいろいろあるとのことですが、完全にパンクするので出てきてから覚えることにして今は忘れます。

 

人称語尾は大きく分けて第1語尾、第2語尾、命令法語尾の3種類があります。

 

第1語尾:直説法現在と直説法未来に使われる

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表内の (I) と (II) は動詞の種類によって使い分けられます。

後々出てくるのですが、動詞を現在語幹の作り方によって大きく2つに分けたときに第1種活用に分類される動詞に使用される語尾が (I), 第2種活用が (II) です。

 

第2語尾:直説法過去、願望法、直説法アオリスト、祈願法、条件法に使われる

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直説法過去だと動詞の頭に a がついてから第2語尾が使われたり、

願望法では語幹と第2語尾の間に ī などの音が挿入されたりと

他の要素と組み合わさって出てきます。

 

命令法語尾:命令法に使われる

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色を付けて囲ってある箇所は第2語尾と共通です。

 

 

動詞は活用の仕方によって第1類~第10類に分類されますが、現在語幹の作り方によって第1種と第2種に分けられます。

2種に分けたときのそれぞれの特徴(共通点)は下記の通り。

第1種活用:1、4、6、10類

 ・語幹は a で終わる

 ・命令法 [P] 二人称単数で語尾なしで語幹をそのまま使う(上表参照)

 ・第2語尾 [Ā] 二人称両数の ethām など、e で始まる語尾の前では語幹の a は省略される

 ・願望法では語幹と語尾の間に ī が入る(語幹末の a と連声して e になる)

 

第2種活用:2、3、5、7、8、9類

 ・強語幹と弱語幹の区別がある

 ・命令法 [P] 二人称単数の語尾は、母音で終わる語幹には -hi, それ以外には -dhi を付ける。

 ・願望法では [P] では yā、[Ā] では ī が語幹と語尾の間に入る。

 

 

今回は動詞が出てくる前置きみたいな部分だけになってしまいましたが、次から実際の変化表に入ります。

 

 

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サンスクリット語でこんなに伸びるとは…古代語のパワーを見た。

この suduha, durduha のもとになってる動詞√duh(乳を搾る)は動詞の活用例なんかでも出てきたりしていて(連声が複雑で厄介)、超初級レベルの学習者の私でもちょいちょい見かける、結構な基本語彙みたいです。

ということはやっぱり、サンスクリット語ができたころは酪農が人々の生活の中で大きな部分を占めていたりしたんだろうか…そういえばラッシーの国ですし。