サンスクリット語学習記録 第4回
始めて2ヶ月経つとは思えない牛歩な進捗ですが、細々と続けております。
前回に引き続きいろいろな種類の名称詞の変化表を覚える作業を続けています。
実際の文章を読み解くのに使えなければ意味がないので、節目節目で演習が入ります。
いよいよ読解だがんばるぞ、と最初の文章を書き写したところで気づきました。
使用している教本『実習サンスクリット文法』の演習問題には解答・解説がないので、独習者は答え合わせができないのです。
練習問題が入ってるというのも本書を選んだ理由の一つだったはずなんですが…
(後から調べてみたら、まえがきみたいなとこに解答を省いた旨がちゃんと書かれてました)
先生に付いて習うことを前提としているのか、演習に解答がない語学の教本は結構多いです。そういえばラテン語の教科書もそうでした。
とはいえ演習しないで先へ進んでも絶対身につかない。
さてどうしよう、と思いましたが幸いもうひとつの教材として参照している「まんどぅーかのサンスクリット・ページ」に演習と解答・解説が載っていましたので、こちらの演習問題をやってから進んでいくことにしました。
演習問題の形式は、数単語の文を日本語に訳すというだけのものです。
単語は辞書や教本の語彙集で調べればよいのですが、載っている語意(訳語)を並べて終わりというわけにはもちろんいきません。
それぞれの単語は性数格による変化・絶対語末規則・連声を経て実際の形になっています。
それをさかのぼってもとの語の意味・形や他の単語との関係から性・数・格を特定し、意味が通じる訳文をつくるという作業が必要です。
我流なので適切な方法なのかわかりませんが、下記の文でやってみます。
①辞書(語彙集)を引く前に、各単語の語尾の形から格や数など、なんとなくアタリをつけます。
連声で変化表と違う見た目になっていることがあるので注意します。
「rで終わる形は習ってないのでsが語末規則と連声で変化したやつかな?」
「mで終わるのは中性の主格・対格っぽい」
「mの下に点が付いたアヌスヴァーラはもともとのmが変化したやつだろうな」
「同じ形で続いてるからこの3単語は性数格が一致して修飾・被修飾か主語・述語の関係になる可能性がある」
ぐらいの感じです。
全く思いつかないことも、外れることくあります。
②知ってる単語(今はほぼ皆無)以外は辞書を引いて語幹(もとの形)を調べます。
このように語幹と語義、性がわかります。
形容詞だと性は男女中どれにでもなりうるのでこの段階ではわからないこともあります。
③その単語の連声前の形、数・格を推定します。
agni- は男性名詞なので、i語幹の男性名詞の変化表を見に行きます。
agner という形になりうるものを表から探します。
sg. Ab.(単数従格)またはsg. G.(単数属格)のagnes が連声で変化したものと推測し、下記のように書き込みます。
Ab.なら「火から」「火より」、G.なら「火の」というような意味になりそうですが、どちらになるかは他の単語を見ないと決められなさそうです。
④他の単語についても同じ手順で推定していきます。単語同士の関連を考えていく中で一度推定した内容が間違っていることに気づくこともしばしばです。
⑤語同士の関係などをもとに、複数の可能性があった性・数・格を絞り込み、訳文をつくります。
・「火から」だと意味が通じなさそう
・「子」という語があるので「誰々の子」という形になる可能性が高い
ということで agner は属格と推測しました。
ピンとこない訳文ですが、「なんか神話の話とかそんなんじゃない?(これ以上考えるの嫌)」となって諦めました。
⑥解答・解説を見て答え合わせをします。
訳文が正確かどうかよりも、各単語の性数格、連声前の形、修飾・被修飾関係等を正しく推定できたかを見ます。
今回は文法事項は正しく読み取れていました。
やっぱり神話かなんかっぽいので「火」は「火の神」「アグニ」にしたほうがいいかな、くらいです。
こんなにスムーズにいく文章ばかりではなく、変化表といくらにらめっこしても該当する形が出てこなくて諦める問題や、変化形は理解できているのにどうしても意味が通じない問題のほうが多いです。
自力で考えないと意味がないのは当然ですが、慣れないうちは詰まったらあんまり時間かけないで解説を見て、何度もやり直すほうが効果的だと思っているのでそうしています。
まんどぅーか氏のサイトは「実際上覚えておくべき重要な内容」と「出現頻度が少なく、都度調べればOKな内容」を分けてくれたりして非常に助かります。
新しいセクションに入るときはこちらを先に読んでからのほうがとっつきやすいくらい。
但し、ごくたまに変化表や演習解説に間違いでは?(本の方と食い違ってる)というところがあるので一応注意が必要と感じました。
どちらの教材も同じ本をもとにしているのでほとんど同じ構成をしていて、片方で疑問を持ったらもう片方を参照する、という補完的な使い方ができるのでなんとかなりそうです。
まだ名称詞から抜けられていませんが、こんなふうに変化表と演習を行ったり来たりしながらちまちまと進んでおります。
いろいろの元ネタが好きでやっている身としては、さっそく「アグニ」とか出てくると嬉しくなりますね。ラテン語の「イグニス」も同根とかね。