サンスクリット語学習記録 第9回

動詞の学習の一番最初に出てきたように、動詞は語幹の作り方によって4種類の組織に分類されます。

 

1) 現在組織(現在語幹に基づく)

 ・直説法現在 (Present = Pres.)

 ・直説法過去 (Imperfect = Impf.)

 ・願望法 (Optative = Opt.)

 ・命令法 (Imperative = Impv.)

2) アオリスト組織(アオリスト語幹に基づく)

 ・直説法アオリスト (Indicative Aorist = Aor.)

 ・祈願法 (Precative = Prec.)

3) 完了組織(完了語幹に基づく)

 ・直説法完了 (Indicative Perfect = Pf.)

4) 未来組織(未来語幹に基づく)

 ・直説法未来 (Indicative Future = Fut.)

 ・条件法 (Conditional = Cond.)

 

前回までで現在組織が終わったので、今回はアオリストです。

アオリスト以下の3種は実際のところ出現頻度がかなり低いようで、教本の章立ても「現在以外の時制の組織」とまとめられ、練習問題もついていません。

ノート取りだけで終わってしまうと定着しにくいですが、それで困らない程度にしか使わないんだろうということにして進んでいきます…

 

※現在以外の組織、分詞、不定詞、絶対詞において、子音や y 以外の半母音で始まる語尾をつくるときに語根と語尾の間に i や ī を挿入するもの、しないもの、どちらでもよいものと語根に種類がある。seṭ語根、aniṭ語根、veṭ語根とそれぞれ名前がついたりしているが、読むだけならきっちり分類を覚える必要はなく「i が入ることもあるんだな」という程度でOK。

 

アオリストというのはもともと古典ギリシャ語の用語で、「その日のこと」を表す時制。

過去にその事象が一度起こったことのみを表し、その結果がどうなったかは限定されないので「不定過去」と呼ばれることもあります。

但し、サンスクリット語では実際のところ未完了過去や完了ときっちり使い分けられてないらしいので、なんとなく過去なんだなーと持っておけばよいみたい。

 

 

見た目の特徴は過去 (Impf.) と同じで、

①頭に a をつける

②第2語尾を使用する

の2つ。

語幹が現在組織と異なります(アオリスト語幹というのがある)。

 

現在組織に10種類あったように、アオリストにも7種類あります。

 

(1) 単純アオリスト

 (i) 語根アオリスト

  語根に頭字の a とそのまま語尾を付けるだけ


f:id:sipsee14:20191215132322j:image

 

 (ii) a - アオリスト

  語根と語尾の間に a が入る。4類の多く、1類・6類の一部がこの形。


f:id:sipsee14:20191215132334j:image

 

 (iii) 重字アオリスト

  重字語幹になる。√śri(赴く)、√dru(走る)以外は少ない。10類、使役活用、名称詞由来動詞など。


f:id:sipsee14:20191215132352j:image

 

(2) 歯擦音アオリスト

 (iv) s - アオリスト

  語根と語尾の間に s がつく。[P] で母音がVṛddhi、[Ā] でGuṇaになる。aniṭ語根はこの形。


f:id:sipsee14:20191215132410j:image

 

 (v) iṣ - アオリスト

  語根と語尾の間にiṣ(まれに īṣ) がつく。seṭ語根、veṭ語根はこの形。[P] で母音がVṛddhi、[Ā] でGuṇaになる。


f:id:sipsee14:20191215132425j:image

 

 (vi) siṣ - アオリスト

  語根と語尾の間に siṣ がつく。[P] しかない。ā で終わる単語が多い。


f:id:sipsee14:20191215132435j:image

 

 (vii) sa - アオリスト

  語根と語尾の間に sa がつく。a/ā 以外の短母音 i/u/ṛ が先行し、かつ ś/ṣ/h で終わる語根のみ。母音は変化なし。


f:id:sipsee14:20191215132449j:image

 

(3) 祈願法

 現在組織にあった願望法 Opt. のアオリスト版。受動態(未習)に似てるらしい。


f:id:sipsee14:20191215132755j:image

 

練習問題もやってないのできちんと理解できている気が全くしないのですが、形がImpf. に似ていて意味上もあまり区別されずに使われているのであれば、「なんか過去のことなんだな」くらいで読めてしまいそうではあります。

 

但し、アオリスト語幹の作り方を把握しておかないと語根にたどり着けず辞書が引けないので、上の7種の変化表をなんとなく眺めておくくらいは必要だろうなと思っています。

 

例えば上の変化表で出てきたみたく、alāviṣam という形から辞書を引くためには、

 ・頭字の a と一人称単数 [P] の語尾 am を取ってみる→ lāviṣ

 ・iṣ の部分が iṣ - アオリストの挿入部分ぽいので取ってみる→ lāv

 ・iṣ - アオリストの [P] なら母音が Vṛddhi化して āv に変化しているはずなので、平音に戻す→ lu またはlū 

みたいな手順を踏んで語根の √lū を復元しないといけないのです…

 

適用されている変化法則が理解でき、形も意味もピタッと合ったときはパズルが解けたような快感があります。

でもこれを読解に堪えうるスピードで行うにはやっぱり演習が必要…