サンスクリット語学習記録 第10回

あけましておめでとうございます。

サンスクリット語をかじり始めて一年経ちました。

もうちょっと進んでいるはずだったんですが、自分が予想以上に怠惰だったということで仕方なく地道に続けたいと思います。

 

今回は「完了」です。

英語の have + 過去分詞でつくる現在完了は「何らかの形で行為の結果が現在に残っている」という意味がありますが、

どうもサンスクリット語の完了はあんまりふつうの過去 Imperfect とあんまり使い分けられてないらしい。

アオリストと同じく「なんとなく過去なんだなー」で行こうと思います。

 

完了形は「重字語幹」+完了語尾(第1、第2語尾と似ているがまた別の語尾)で作ります。

強語幹と弱語幹の区別があります。

 

〇重字について

 語根の頭の音(に近い音)を重複させて頭に音節を付けて作る語幹を重字語幹(重複語幹)と言います。

 違うんだけど「どもる」みたいなイメージで理解してます。

 

・子音で始まる語根は、第3類動詞で出てきた作り方なので再掲します。

 

 ① 有気音はそれに相応する無気音 (ch→c, th→t...)

 (例)√chid(絶つ)→完了 cicheda, √dhā(置く)→ 現在 dadhāmi

 ② 喉音はそれに相当する無気音 (k / kh→c, g / gh / h→j)

 (例)√khan(掘る)→完了 cakhāna, √hā(行く)→ 現在 jahāmi

 ③ 語根が複数の子音ではじまる場合、最初の子音に基づく

 (例)√dru(走る)→完了 dudrāva, √kruś(叫ぶ)→完了cukrośa

 ④ 上記③の最初の子音が歯擦音の場合、2番目の子音に基づく

 (例)√spṛś(触れる)→完了 parparśa, √sthā(留まる)→ 完了 tastha

 ⑤ 重字音節の母音は a を使うことが多いが、語根が i/u系列なら対応することも

 (例)√krī(買う)→完了 cikrāya, √kup(怒る)→完了 cukopa

 

・母音で始まる語根は基本的にその母音で作る

 (例)√ad(食べる)→ ād, √ap(得る)→ āp

・i/u は強語幹のとき iy/uv にを使う

 (例)√iṣ(望む)→ 強語幹:iyeṣ, 弱語幹:īṣ, √uṣ(焼く)→ 強語幹:uvoṣ, 弱語幹:ūṣ

・語頭の a に2つ以上の子音が続くときと語頭が ṛ である語根は ān を使う

 (例)√arc(尊ぶ)→ ānarc, √ṛdn(栄える)→ ānardh

・ya/vaで始まる語根は i/u で重字させる

 (例)√yaj →強語幹:iyāj/iyaj, 弱語幹:īj √vac →強語幹:uvāc/uvac, 弱語幹:ūc

 

〇活用語尾

こうして作った重字語幹に、完了形専用の語尾がつきます。



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強語幹は [P] の単数のみで使います。

 

〇いろんな完了語幹のつくりかた

・子音で始まる語尾は、語幹との間に i を挿入することが多い。

 

 (例)√bhid(破る)→ 1st. du. [P] は bibhidiva

    √nī(導く)→ 2nd. sg. [P] は ninetha/ninayitha

 3rd. pl. [Ā] の語尾 re には必ず

 2nd. sg. [P] の語尾 tha には入れないことが多い

 

・語頭と語末が子音である語根で、中間の母音が長い場合(or 後ろに二重子音)は、強語幹と弱語幹の区別がなくなる

 =語幹の形がいつも同じ

 (例)√mīl(瞬く)→ mimīl, √bandh(縛る)→ babandh

    √nind(非難する)→ ninind, √prach(問う)→ papracch

 

・中間に i/u/ṛ を持つ語根は Guṇa化して強語幹をつくる

 (例)√bhid(被る)→ 強語幹:bibhed, 弱語幹:bibhed

    √puṣ(養う)→ 強語幹:pupoṣ, 弱語幹:pupuṣ

    √dṛś(見る)→ 強語幹:dadarś, 弱語幹:dadṛś

 


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・語根母音 a + 単子音の語根の場合

 1st. sg. [P] は強語幹が Vṛddhi化(長音階)することがある

 3rd. sg. [P] は強語幹で必ず Vṛddhi化する

 2nd. sg. [P] は変化しないことが多い

 弱語幹は語根母音の省略などでつくる。

 


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・同様に語根母音を省いて弱語幹をつくる語根

 (例)√khan(掘る)→ sg. 3rd. [P] cakhāna / pl. 3rd. [P] cakhnur

    √jan(生まれる)→ sg. 3rd. [P] jajāna / pl. 3rd. [P] jajñur

    √han(殺す)→ sg. 3rd. [P] jaghāna / pl. 3rd. [P] jaghnur

 

・単子音 + 単子音の形で、重字に代用の子音を使わなくてよい(語根の子音をそのまま重字に使える)ものは、語根を a → e に変え、重字を起こさないで弱語幹をつくる

 


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 同様に作る語根

 (例)√nad(ほえる)→ pl. 3rd. [P] nedur

    √pat(おちる)→ pl. 1st. [P] petima

    √yam(拘束する)→ pl. 3rd. [Ā] yemire

    √tan(拡げる)→ sg. 2nd. [P] tatantha/tenitha(結合母音 i が入る場合)

 

・ā, ai, au で終わる語根(ā or 二重母音)

 強語幹:1st/3rd. sg [P] で -au, 2nd. sg. [P] では末母音を ā/ī として活用

 弱語幹:母音で始まる語尾の前で語根末の母音が消滅する。子音で始まる語尾の前で は語根末母音が i になる。

 


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・i/ī/u/ū/ṛ/ṝ で終わる語根

 1. 強語幹で1st. sg. [P] で 母音がGuṇa化もしくはVṛddhi化。2nd. は Guṇa, 3rd. は

Vṛddhi化する。

 (例)nī(導く)→ 1st. ninaya/nināya, 2nd. ninetha/ninayitha, 3rd. nināya

 2. 弱語幹 ṛ で終わり、重子音で始まる語根と多くの ṝ で終わる語根では母音が Guṇa、それ以外では平韻



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コーヒーこぼしたシミもちゃんと反映する優秀なスキャナアプリ。 

 

・特別な語根


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〇複合完了

 aya を必要とする語幹(=第10類動詞、使役活用法、名称詞由来動詞)を対象とする。

 3種類あります。

  ① aya を伴う語幹 + ām + √kṛ(なす)の 完了形 [P]/[Ā]

  ② aya を伴う語幹 + ām + √as(ある)の 完了形 [P]

  ③ aya を伴う語幹 + ām + √bhū(なる)の 完了形 [P]

 

 基礎的な動詞を標識として使うの、英語の現在完了で haveを使うのと似てますね。

 

 

以上です。 

種類が多くて厄介ですが、完了語尾が特徴的なので「完了だ!」ってわかれば良いことにしておきます。

 

今年は早いうちに短い文章を読み始めたいと思っていますが、どうかなー。