サンスクリット語学習記録 第5回

スタートして5ヶ月近くかかりましたが、ようやく名詞(+形容詞)の章が一通り終わりました。

知識として定着したわけでは全くありません(ノートに変化表を写してちょろっと練習問題をやっただけ)。

 

いやー種類が多すぎる…ノートをもとにリストにするとこんな感じ。

 

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 ※基本的に語幹(変化しない部分)がどの音で終わるかで分類されます。 

 1. 母音語幹

・a-(男性・中性が多い)

・ā-(女性)

・i-(男性・中性が多い)

・u-(男性・中性が多い)

・ī-(女性のみ)※語幹が単音節の場合と多音節の場合で微妙に異なる

・ū-(女性のみ)※語幹が単音節の場合と多音節の場合で微妙に異なる

・tṛ- / ṛ-「~する人・もの」を表す「行為者名詞」の場合男性・中性(女性はtri-)

 親族名詞の場合中性はなし

・ai-

・o-(サンスクリットでは二重母音扱い)

au-(母音語幹の中では規則に忠実なので覚えたい)

 

2. 子音語幹:母音語幹より語尾が規則的

◇語幹が1種類

・t- 中性では複数主・対・呼格で鼻音が語幹に入る = 後で出てくる強語幹に似てる?

・ś- śは絶対語末規則でkになることに注意、d, jなども同じ

・r- rは絶対語末規則でḥになることに注意

・in- / min- / vin-(男性・中性のみ。女性はinī となりī- 語幹の変化に従う)pada語尾の前で子音連続となりnが消える

・as- / is- / us-(中性が多い)有声語尾の前では連声でas / is / us → o / ir / ur になる。形容詞の男性・女性変化ではsg/du/plのNとdu/plのV以外中性と同じ

◇語幹が2種類

☆強語幹と弱語幹の3種類。強語幹は男性単数・両数の主・対・呼格と中性複数の主・対・呼格

・at- 為他言の現在分詞。(強)ant (弱)at

 ※例外:重複語幹の現在分詞・未来分詞はすべて弱語幹、ただし中性複数の主・対・呼格は強語幹も可

・īyas- 比較級の形容詞。(強)īyaṃs (弱)īyas as-と同じくpada語尾の前で o となる

◇語幹が3種類

☆強中弱の3種。男性のpada語尾の前、中性単数主・対・呼(処)格、両数複数のpada語尾前が中語幹となる。

・an- / man- / van- (強)ān (中)a (弱)ñ 子音+ man/van は2語幹になる

・vas- 為他言の完了分詞。(強)vāṃs (中)vat (弱)uṣ ※女性はusīとなる

・ac- 方角を表す語が多い?(強)āñc (中)ac (弱)ic 

 ※2語幹のものもある:(強)āñc (弱)āc

・その他特殊な語幹:path, math(単数主格が特殊)、ap(複数形しかない)など

 

3. 比較法:形容詞の語幹に語尾をつけて比較級・最上級を作る

・tara(比較級)、tama(最上級) a-語幹形容詞と同じ変化

 ※形容詞以外の語にもつくことがある

・īyas(比較級)、iṣṭha(最上級) iṣṭhaは a-語幹形容詞と同じ変化

 ※形容詞の語幹そのままではなく-u, - ra などを取り除きGuṇa化した語根部分につく パターン色々

 

4. 代名詞:激しく変化するので丸覚えするしかない しんどい

◇人称代名詞

・mad / asmad 一人称 性の区別なし

・tuad / yusmad 二人称 性の区別なし

◇指示代名詞

・tad (彼・彼女・その)/ estad-(これ) 単数主格のsasは sa になったり so になったりする

・idam(これ) 近くを表す 一人称を表すのに使われることも

・adas(あれ) idamと逆に遠くを表す

・enad(彼・彼女・それ) 単数対・具格、両数対・属・処格、複数対格のみ使用

◇関係代名詞

・yad

◇疑問代名詞

・kim

不定代名詞(something, somehow)

・kimの変化形にcit (<cid)、cana、またはapiを加える

◇代名詞的形容詞

・anya(他の)、itara(その他の)、ekatama(複数中の1つの)など yadと同じ変化

・sarva / viśva(すべての) kimと同じ変化だが中性単数主・対格が-tでなく-mとなる

 

5. 数詞 これも特殊なので覚えるしかない

・基数詞(数量を表す):1から順に eka, dvi, tri, catur, pañca, ṣaṣ, sapta, asṭa, nava, daśa... もちろんそれぞれ変化する

・序数詞(「~番目」を表す):prathama, dvitīya, tṛtīya, caturha, pañcama, ṣaṣtha, saptama, aṣṭama, navama, daśama...

※数の副詞:「~回目」「~種類」「~つずつ」

 

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とこれだけあるので完全に覚えきるのはたぶん無理…

 

変化表を見ながらなら性・数・格の特定する作業の精度は上がってきた実感があります。

完璧に覚えてなくても当たりをつけて変化表から探し出すまではできるようになってきました。

 

ただそこから意味の通る日本語訳を作るのに苦戦している状態です。

先に来たら被修飾語、とかの決まりがなくて語順が自由なので、語同士の意味のつながりを読み取るのがなかなか難しい。

 

これは、まだ名詞と形容詞しか出てこないからかもしれないと思っています。

動詞が出てくればもう少し名詞同士の関係は読み取りやすくなるのでは…?と甘いことを考えていますが、果たして。

 

上で為他言というのが出てきたので、なんのこっちゃと思ってちょっと調べてみたところ

能動態だけど対象が自分自身なのが為自、他なのが為他 らしい。

あんまりピンとこない。

今後また動詞を勉強していけばしっかり出てくるでしょう。

 

代名詞とかちゃんと覚えられてないけど、次から動詞へ進みます!

 

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 インドネシア語で「第一の」を意味する単語は "pertama" なんですが、

すこーしだけインドネシア語をかじったので、序数詞のところで「第一の」に

"prathama" が出てきて「おーわかる!」となって楽しかったですね。

 

インドネシア国営の石油会社はプルタミナ (Pertamina) だし、ひとの名前でPratamaさんも結構いるけど、これもサンスクリット語源かな…?

 

インドネシア語におけるサンスクリットからの借用語のリスト」 っていう素敵なページがWikipediaにあるんですが、イスラム教徒とキリスト教徒で合わせて97%を占める国で今でもこんなにあるのはすごいですねー。さすが。

en.wikipedia.org

  

いろいろな元ネタが好きで言語をやっている身としては、こういうのがたくさん出てくるととてもやる気が出ます。

関連付けて覚えられるという実利もあるし。

サンスクリット語学習記録 第4回

始めて2ヶ月経つとは思えない牛歩な進捗ですが、細々と続けております。

 

前回に引き続きいろいろな種類の名称詞の変化表を覚える作業を続けています。

実際の文章を読み解くのに使えなければ意味がないので、節目節目で演習が入ります。

 

いよいよ読解だがんばるぞ、と最初の文章を書き写したところで気づきました。

 

使用している教本『実習サンスクリット文法』の演習問題には解答・解説がないので、独習者は答え合わせができないのです。

 

練習問題が入ってるというのも本書を選んだ理由の一つだったはずなんですが…

(後から調べてみたら、まえがきみたいなとこに解答を省いた旨がちゃんと書かれてました)

 

先生に付いて習うことを前提としているのか、演習に解答がない語学の教本は結構多いです。そういえばラテン語の教科書もそうでした。

 

とはいえ演習しないで先へ進んでも絶対身につかない。

さてどうしよう、と思いましたが幸いもうひとつの教材として参照している「まんどぅーかのサンスクリット・ページ」に演習と解答・解説が載っていましたので、こちらの演習問題をやってから進んでいくことにしました。

 

演習問題の形式は、数単語の文を日本語に訳すというだけのものです。

単語は辞書や教本の語彙集で調べればよいのですが、載っている語意(訳語)を並べて終わりというわけにはもちろんいきません。

 

それぞれの単語は性数格による変化・絶対語末規則・連声を経て実際の形になっています。

それをさかのぼってもとの語の意味・形や他の単語との関係から性・数・格を特定し、意味が通じる訳文をつくるという作業が必要です。

 

我流なので適切な方法なのかわかりませんが、下記の文でやってみます。


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①辞書(語彙集)を引く前に、各単語の語尾の形から格や数など、なんとなくアタリをつけます。

連声で変化表と違う見た目になっていることがあるので注意します。


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「rで終わる形は習ってないのでsが語末規則と連声で変化したやつかな?」

「mで終わるのは中性の主格・対格っぽい」

「mの下に点が付いたアヌスヴァーラはもともとのmが変化したやつだろうな」

「同じ形で続いてるからこの3単語は性数格が一致して修飾・被修飾か主語・述語の関係になる可能性がある」

ぐらいの感じです。

全く思いつかないことも、外れることくあります。

 

②知ってる単語(今はほぼ皆無)以外は辞書を引いて語幹(もとの形)を調べます。


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このように語幹と語義、性がわかります。

形容詞だと性は男女中どれにでもなりうるのでこの段階ではわからないこともあります。

 

③その単語の連声前の形、数・格を推定します。

agni- は男性名詞なので、i語幹の男性名詞の変化表を見に行きます。


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agner という形になりうるものを表から探します。

sg. Ab.(単数従格)またはsg. G.(単数属格)のagnes が連声で変化したものと推測し、下記のように書き込みます。f:id:sipsee14:20190303164603j:image

Ab.なら「火から」「火より」、G.なら「火の」というような意味になりそうですが、どちらになるかは他の単語を見ないと決められなさそうです。

 

④他の単語についても同じ手順で推定していきます。単語同士の関連を考えていく中で一度推定した内容が間違っていることに気づくこともしばしばです。
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⑤語同士の関係などをもとに、複数の可能性があった性・数・格を絞り込み、訳文をつくります。

・「火から」だと意味が通じなさそう

・「子」という語があるので「誰々の子」という形になる可能性が高い

ということで agner は属格と推測しました。


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ピンとこない訳文ですが、「なんか神話の話とかそんなんじゃない?(これ以上考えるの嫌)」となって諦めました。

 

⑥解答・解説を見て答え合わせをします。

訳文が正確かどうかよりも、各単語の性数格、連声前の形、修飾・被修飾関係等を正しく推定できたかを見ます。


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今回は文法事項は正しく読み取れていました。

やっぱり神話かなんかっぽいので「火」は「火の神」「アグニ」にしたほうがいいかな、くらいです。

 

こんなにスムーズにいく文章ばかりではなく、変化表といくらにらめっこしても該当する形が出てこなくて諦める問題や、変化形は理解できているのにどうしても意味が通じない問題のほうが多いです。

 

自力で考えないと意味がないのは当然ですが、慣れないうちは詰まったらあんまり時間かけないで解説を見て、何度もやり直すほうが効果的だと思っているのでそうしています。

 

まんどぅーか氏のサイトは「実際上覚えておくべき重要な内容」と「出現頻度が少なく、都度調べればOKな内容」を分けてくれたりして非常に助かります。

新しいセクションに入るときはこちらを先に読んでからのほうがとっつきやすいくらい。

但し、ごくたまに変化表や演習解説に間違いでは?(本の方と食い違ってる)というところがあるので一応注意が必要と感じました。

 

どちらの教材も同じ本をもとにしているのでほとんど同じ構成をしていて、片方で疑問を持ったらもう片方を参照する、という補完的な使い方ができるのでなんとかなりそうです。

 

まだ名称詞から抜けられていませんが、こんなふうに変化表と演習を行ったり来たりしながらちまちまと進んでおります。

 

 

いろいろの元ネタが好きでやっている身としては、さっそく「アグニ」とか出てくると嬉しくなりますね。ラテン語の「イグニス」も同根とかね。

サンスクリット語学習記録 第3回

前回までの連声も全然覚えきれていませんが、演習しながら自然に覚えていくことにして、次は語形変化に入ります。

ひたすら変化表を覚え続ける作業になります。言語をやるにはある程度力技が必要。脳筋メソッドです。

 

まずは名詞と形容詞。

サンスクリット語において名詞と形容詞は区別の必要があまりなく、ほぼ同じ変化をするため私の使っている『実習サンスクリット文法』ではまとめて名称詞と呼んでいます。

 

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ラテン語も名詞と形容詞おんなじだった気がする、たしか。

 

名(称)詞が持つ文法的な属性として、下記の3つが重要です。

 

・性

男性名詞、女性名詞、中性名詞の3種類があり、それぞれ異なる変化をします。

ドイツ語とかフランス語とかやった人にはおなじみのやつですね。

実際のモノの性とたいがい一致しますが、「喉」が男性だったり「舌」が女性だったりと

あんまりあてにならず、「そういうもんだ」と思って覚えるしかないです。

 

・数

英語の可算名詞でも単数と複数で区別して形を変える(sをつける)ことがありますが、サンスクリット語には「両数」があって単数とも複数とも違う変化をします。それだけ覚えるパターンが増えるということですね…

 

・格

その名詞の、ほかの名詞や述語との関係(役割)などを表します。主語なのか目的語なのか、起点を表すのか場所を表すのか、などです。

日本語ではこうした内容を「が」「に」「を」「から」といった格助詞で表します。

英語では語順や前置詞を使って表現されますが、I - my - me のように代名詞には語形の変化が残ってますね。

 

サンスクリット語では語尾の変化で格を表すのですが、それが8種類あります。

すごく簡単にまとめるとこのようになります。

 

①主格 Nominative:主語になる。

②対格 Accusative:直接目的語になる。

③具格 Instrumental:用具や手段を表す。

④為格 Dative:間接目的語になる。

⑤従格 Ablative:分離の起点、比較の対象を表す。

⑥属格 Genitive:所属を表す。「~の」

⑦処格 Locative:場所を表す。

⑧呼格 Vocative:呼びかけに使う。

 

これらが単数/両数/複数で別々の形になります。同じ形で重複する格も多いですが。

 

で、名称詞には語幹(格語尾が付く前の、語の中核部分)が a で終わるやつ、 i で終わるやつ、子音で終わるやつ…といろいろあって、それぞれに男性形と女性系と中性系があって、それぞれが違った格変化をするので、かたっぱしから覚えていくわけです。

 

したがってノートはこんな感じの表が延々続いていくことになります。


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覚えるといっても、この表とにらめっこするだけで身につくほど高性能の目と頭はもっていないので、実際の文を読み解きながら必要な表に戻ってくるという方法でやっていきます。

 

というわけで次回はいよいよ演習です。

 

 

影をつくらずにノートの写真を綺麗に撮る方法をご存知の方、マジで教えてください。

もともとのノートが汚いからどうしようもないのか…。

サンスクリット語学習記録 第2回

前回はサンスクリット語にどんな音があるかだけで終わってしまいましたが

次に覚えるのは音がどんなふうに変化するかの規則です。

 

サンスクリット語は単語を並べればそのまま文がつくれるわけではなく、

 

①単語の最後の位置(絶対語末という)に来られるのは限られた音だけなので、

元の形が別の音の場合は変化しないといけなかったり

 

②単語と単語、あるいは単語の部品と部品が接続するときに

発音しやすいように接続部周辺の音が変化することがあったり

 

という現象が起こるので、それがどんな規則による変化なのかを

覚える必要があります。

これを知らないと、テキストに出てくる形(規則に従って変化した後の形)を見ても

単語のもとの形がわからないので辞書すら引けません。

 

 

単語と単語がくっつくときに接続部周辺の音が変化する現象は

日本語にも「連濁」というやつがあります。

 

おとぎ+はなし→おとぎなし

株式(かぶしき)+会社(かいしゃ)→株式会社(かぶしきいしゃ)

 

みたいに、複合語を作るときに後ろの語の最初の子音が清音から濁音になる現象です。

音声学的に言えば「無声の子音が有声化している」ということになります。

周りの有声音(母音)の影響で子音が変化する現象、すなわち「同化」の一種と考えられます。

 

ちなみに、複合語なら何でも連濁するわけではなく

連濁が阻止される条件はたくさん指摘されています。

 

◇後部要素にもともと濁音が含まれる場合

・髪+飾り→髪飾り(かみざり)

◇意味的に修飾・被修飾でなく並列の場合

・山+川→山川(やまわ)

◇連濁するのは和語が主で、漢語や外来語は稀(ただし「株式会社」みたいな例もある)

・ライス+カレー→ライスレー

・赤+カレイ(魚)→アカレイ

 

などなど…

連濁 - Wikipedia

 

規則とはいうものの、厳格に適用されるわけではなく

例外が見つかるので今でも色々と考察がされています。たぶん。

 

 

またすっかり日本語の話に逸れてしまいましたが、

サンスクリット語の音の変化(連声とよぶ)も同じように周辺の音に

影響されて起こると考えることができます。

 

例えば、日本語の連濁と同じように

/k/ /t/ /p/ が有声音の前で /g/ /d/ /b/ に変化=有声化します。

 

また日本語の「ん」みたいに、鼻音の発音位置が後ろの音によって

喉の近くになったり歯の辺りになったり唇になったりもします。

 

というようなのが前と後ろの音の組合せパターンによって様々あります。

表になるとこんな感じ。


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覚えなくてはいけないパターンの数はめちゃめちゃ多いのですが、だからこそ

ただ丸暗記するよりも日本語と似た現象だと理解すれば脳の負担が減る!と思って

連濁やらなんやらのことを思い出しながらノートをとってました。

 

(とはいえこんなのを単語の実例なしに覚えるのは非常に辛いので、

一通りぼんやり理解しておいて、あとで実例が出てきたときに戻って

覚えていくようにするつもりではありますが…)

 

語形変化の順番としては

 

1) 単語のもとの形から、

2) 絶対語末規則で末尾の音が変化し、

3) さらに上の連声規則が適用されて変化する

 

となるので

3) を見て 2) へ戻し、さらに 1) へ戻してもとの形を特定して意味を理解する、または辞書で探すというプロセスでテキストを読んでいくことになりそうです(まだやってないからわかんない)。

 

言語学は言語の習得が至上目的ではないのですが、

種々の言語に起きる現象を同じ理屈で一般的に理解することができるので

新しい言語で新しい現象が出てきても「○○語のアレと一緒かな」となって

あまり慌てなくなります。

 

多言語をやる方は言語学の基礎をかじってみると役立つはずです。

音声学と音韻論だけでも。

 

学習記録といいつつ日本語に気が散ってる上に言語学のCMをやってて

ぜんぜん復習になってないので、次回はもっとサンスクリット語に集中します…

サンスクリット語学習記録 第1回

サンスクリット語といえば複雑な語形変化。

語の変化パターンをひたすら覚える作業になるんだろうな…と想像して教材を開きましたが、

スタートして3週間経って、なんとまだ語形の変化表の章に入れていません。

 

というのも、個々の単語を構成する「音」についてまず理解する必要があるからです。

教材がそういう順番になっているのでそういうことだと思います。

 

まずはサンスクリット語にどんな音があるかですが、ここでいう「音」は生の発音自体というよりは

「その言語では同じ音とみなされる音の集まり(音素という)」です。

 

例えば、日本語の「三枚 さんまい」「三体 さんたい」「三階 さんかい」の「ん」は発音する位置がすべて違うので

音声学的にはそれぞれ違う音とされますが、日本語話者は区別しません。

どの音を発音しても同じ音素 /N/ と認識しているからです。

 

また、舌や唇などで空気の流れをふさいでから開放することで発音する音(破裂音という)には

日本語だと「有声」と「無声」の区別があります。

有声音は g, d, b のように喉仏(声帯)が震える音、無声音は k, t, p のように震えない音です。

つまり濁音と清音です。

有声音と無声音が区別されるので、

有声無声の違いだけで「ガス」「カス」のように異なる意味を表すことができます。

 

これが中国語や韓国語なんかだと有声無声の区別がなく、かわりに「有気音」と「無気音」を区別します。

有気音は破裂させた後に息が漏れる音を伴います。

発音記号では h をつけて kh, ph  みたいに書き表されることもあります。

kha だと k を発音してから a で喉を震わせるまでの間に息を漏らすような感じで「カハァ…」みたいな発音ですかね。

 

日本語で、全部有気音にして「kha tha tha tha khi」と発音しても「変な奴だな」とは思われるかもしれませんが、

「肩たたき」以外の単語として理解されることはないでしょう。

有気・無気の違いを意味の区別に使わないためです。

日本語話者にはそれぞれ /k/ /t/ という音素として認識されると思います。

 

さてサンスクリット語はというと、有声無声・有気無気両方の区別があります。

つまり唇音(唇の閉鎖→開放で出す音)だけでも p(無声無気)ph(無声有気)b(有声無気)bh(有声有気)の 4種類があることになります。

 

さらに調音位置(音を出す位置)についても日本語では歯音と区別されないそり舌音(舌を反らせて裏側を上にあてて出す音)があったり、

母音もアイウエオの5つ以外に二重母音があったりするので、

日本語と比べると音素の種類が多いです。

 

といっても、アルファベットを使って学習するにあたってはどの記号が何を表すかを覚えるだけなので、あんまり難しくありません。



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というふうに理解してきたんですけど、

Wikipediaに「認知言語学のように音素を認めない立場がある」とあって あれ?となっています。

大学で付いた先生がアンチ認知だったのでよく知りませんが、そうなのかな…

 

 

サンスクリット語の学習記録のはずが言語学基礎の復習になってしまった、あとノートの写真をきれいに撮る方法がわからない。

 

次回もまだ音声の話です。

サンスクリット語学習記録 第0回

こんばんは。
しぷしーと申します。


私はTwitterでもちょろちょろ言語ネタを呟くことがありますが
かつて言語学を専攻していた経験もあり、語学を趣味の一つとしております。

これまでは英語ドイツ語ラテン語中国語フィンランドタイ語インドネシア語などをかじってきました。
(大概は本当にちょっとかじっただけで、実用に耐えうるレベルにあるのは英語とどうにかタイ語?くらいです)

2019年になるにあたり何か新しい言語をやろうと思い(自己啓発ではなく、これは娯楽です)
Twitterでちょっとご意見を募ってみたりした結果、以前から少し気になっていたサンスクリット語をやることに決めました。

せっかくやるなら学習記録をつけようと思ってブログを開設してみました。

ぬるーい研究室のゆるーい勉強でしかも卒業後時間が経って知識はスカスカとはいえ、一応言語学をやった人間がどのように語学をやっていくのかを記録しておけば、もしかして誰かの役に立つかもしれない!

とか思わないこともないですが、まあそんなことはないでしょう。


勉強をはじめる前の段階でのサンスクリット語に対する印象は

・英語やその他ヨーロッパ諸語とは響きも文字も全く違うイメージだがもとは同じの印欧語族ということになるのが興味深い(以前からサンスクリット語が気になっていた理由です)

・仏教系の元ネタになっている言葉が多い。語源がたくさんあるので、言語系統は違うけどタイ語の語彙が増えたりするかも?

ラテン語なんかと一緒で語形変化をゴリゴリ覚えていく必要があり、脳に良い負担がかかりそう

という感じ。

学習してみるとイメージが変わってくるんでしょうか…


教材は下記を使用します。

① 吹田隆道編著『実習サンスクリット文法』春秋社、2015年。

②「まんどぅーかのサンスクリット・ページ」内 「文法概説 よみがえれ『実習梵語学』」
文法概説 - サンスクリット語 文法入門講座


①は自分で書店で選んだもの、②はtwitterで田村トシカズ(貯蓄)さんにおすすめいただいたサイト。

どちらも荻原雲来『実習梵語学』をもとにしているので大きく食い違うことはないだろう、
と先々まできちんと考えて本を選んだということは特になく、装丁やら構成やらが一番新しそうで取っつきやすそうだったから。


ジュンク堂へ行ったら言語コーナーを隅から隅まで探してもサンスクリット語関連書が全く見つからず、
検索端末を使って別階の仏教学コーナーへ行くはめになりました。そこで見つけたのが①の本。

仏教関連以外の動機でサンスクリット語をやろうと思う人なんてほとんどいないんだろうな。


なおブログタイトルのBuffalo buffalo...ってやつはお気に入りのWikipedia見出しで梵語とは何の関係もありません。
文法的に正しい英文です。こういうのも大好きです。
Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo - Wikipedia


サンスクリット以外も何か書くかもしれないし、すぐ飽きてノートの写真を貼るだけの場所になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
やるぞ~