サンスクリット語学習記録 第12回

今回は受動言(受動態)です。

意味は英語や日本語でもなじみのある受身「~される」になります。

 

動作の対象が他者になる為他言 = [P] や対象が自分になる為自言 = [Ā] と並ぶような意味合いになりますが、変化が大きく別の動詞のように活用するので個別でセクション分けされています。

 

 〇現在組織の受動言

・現在組織の受動言は、語根にyaをつけてつくる。活用は [Ā] のみ(意味上当然と言えば当然?)

 受動言:√+ ya + 語尾(第4類動詞 [Ā] )

 

f:id:sipsee14:20200329224140j:image

 

語根末の音が

・ā で終わる語根:2種類ある

 ① āのまま…(例)√jñā(知る)→ jñāya, √pā(保護する)→ pāya など

 ② ī になる…(例)√pā(飲む)→ pīya, √dā(与える)→ dīya など

 

・i/u で終わる語根:母音が長母音になる

 (例)√ji(勝つ)→ jīya, √śru(聞く)→ śrūya など

 

・ṛ  で終わる語根:ri に変化。重子音の後ろではGuṇa化

 (例)√kṛ(なす)→ kriya, √smṛ(記憶する)→ smarya など

 

・ṝ  で終わる語根:īr に変化。唇音の後ろではūr になる

 (例)√śṝ(破る)→ śīrya, √pṝ(満たす)→ pūrya など

 

・語根末子音の前に鼻音がある場合:2パターンある

 ① 鼻音省略…(例)√daṃś(噛む)→ daśya, √bandh(縛る)→ bandhya など。こちらのほうが一般的

 ② 省略されない…(例)√nand(喜ぶ)→ nandya, √nindya(非難する)→ nindya, √han(殺す)→ hanya

 

現在以外の組織の受動言

・アオリスト、完了、未来では受動態は [Ā] と基本的に同じ。ただし、アオリストは特別な形をつくれる。

 

〇アオリスト

・語根の語頭にオーグメントの a, 語尾に i を付けると受動態アオリストの3人称単数形をつくる。

 pass.Aor.3rd.sg:a + √ + 語尾 i

 

・母音で終わる語根と単子音 + a + 単子音の場合:Vṛddhi化

 (例)√nī(導く)→ anāyi, √lū(断つ)→ alāvi, √kṛ(なす)→ akāriなど

 ※√jan(生まれる)→ ajami, √vadh(殺す)→ avadhi など例外も

 

・単子音の間にi, u, rをはさんだ語根:Guṇa化

 (例)√diś(示す)→ adeśi, √budh(覚る)→ abodhi, √dṛś(見る)→ adarśi など

 

・ā で終わる語根に:y を挿入する

 (例)√dā(与える)→ adāyi など

 

※全ての母音で終わる語根および √grah, √drś, √hanは3人称単数以外で iṣ-アオリストの [Ā] を受動の意味で使える

 (例)√nī(導く)→ anāyiṣ, √lū(断つ)→alāviṣ, √grah(掴む)→ agrāhiṣ

    √dṛś(見る)→ adarśiṣ, √han(殺す) → aghāniṣ など

 

〇その他の受動言

・複合完了:√kṛ, √as, √bhū を必ず [Ā] で用い、受動を表す

・未来、条件法:未来の接尾辞 iṣya を付加して特別な受動形を作ることもある

 (例)√nī(導く)→ nāyiṣya (pass. Fut), anāyiṣya (pass. Cond.)

 

 

※動作主(英語の受動態でいうby)は具格 instrumentalで表される

 

受動態はやたらと出てくる(らしい)。

標識である ya は他の活用法でも出てくるから紛らわしそう…